未診断疾患患者に対する網羅的遺伝子診断プロジェクト

人体の設計図ともいわれるDNAの配列や遺伝子を、最先端の機器を使って幅広く調べることで、従来の医学的検査で診断のついていない患者さんの診断の手がかりが得られることがあります。

未診断疾患イニシアチブInitiative on Rare and Undiagnosed Diseases (IRUD:アイラッド) は、国立研究開発法人 日本医療研究開発機構 (AMED) によ り主導され、日本全国の診断がつかずに困っている患者さん(未診断疾患患者)に対して、遺伝子を幅広く調べ、その結果を症状と照らし合わせることで、患者さんの人数が少ない難病や、これまでに知られていない新しい疾患を診断しようとしています。

IRUDでは平成27年(2015年)に小児IRUD(IRUD-P)が始まっており、下に記載した実例のような成果を挙げています。平成28年(2016年)からは成人IRUD(IRUD-A)も開始し、小児・成人それぞれの患者さんに対して遺伝学的解析結果等を含めた総合的な診断を提供する体制構築を目指しています。徳島大学病院は四国地方における小児・成人のIRUD拠点病院になっています。

IRUD-Pにより、未診断疾患の確立や希少疾患の原因解明が行われた実例

IRUD-Pを契機に、新たな疾患として確立した未診断疾患(Undiagnosed Diseases)の例

小児期より血小板減少と発達遅滞を伴っていた。各種の検査を行ったが、原因が不明であった。しかし、血球系と中枢神経系の異常という「多系統疾患」であり、遺伝子異常を伴う「未診断疾患」が想定された。エクソーム解析*で、これまでヒトの疾患と関係が示されたことのない遺伝子に新生突然変異が発見された。その後、国内の他の医療機関で同様の組み合わせの患者が見出され、当該遺伝子を調べたところ同じ変異の新生突然変異が同定された。これまでに知られていない新規遺伝性疾患であることが確立した。


*エクソーム解析:全ゲノムのうち、エクソン配列(構造遺伝子の塩基配列のうちタンパク質合成の情報をもつ部分)のみを網羅的に解析する手法